湊 純也

Junya Minato

湊純也氏は、国内外で研鑽を積んだオーナーシェフであり、2015年に佐賀県伊万里市で『カテクオーレ』を開業した。もともと畜産を学ぶために佐賀に移住し、夫婦で牛の育成に取り組んだ経験を持つ。畜産業に従事する中で、素材の個性や命の尊さに対する深い理解を得たことが、シェフとしての独自のスタイルを築くきっかけとなった。

湊氏が大切にするのは「瞬間を捉える料理」。彼の料理はすべて、その時々の素材の状態を最大限に活かすことに重点を置いており、特に「牛乳が一番香り高くなる瞬間」や「食材の持つ風味が最も際立つタイミング」を見極めることにこだわっている。代表的な例として、パンナコッタをゲストの前で牛乳から作り上げる技法を採用しており、牛乳の持つ香りとテクスチャの頂点を表現することを目指している。

『カテクオーレ』では、湊氏自らが育てた牛の肉や牛乳を用い、素材ごとにその特性に合わせた調理法を採用することで、同じ料理でも部位や風味の違いを巧みに表現している。また、店内のカウンター席ではすべての調理工程がゲストの目の前で行われ、湊氏が素材と向き合いながら「ア・ラ・ミニッツ（出来たて）」で提供される料理の数々を楽しめる贅沢な体験ができる。

湊氏の哲学は「素材の持つ最頂点のおいしさを引き出すこと」であり、仕込みを一切行わず、料理の瞬間的な美しさと味わいを追求するスタイルを確立している。そのため、10～12品から成るコース料理は最低でも4時間かかるが、一から料理が仕上がっていく様を眺めながら、その過程を共有する時間は格別である。

食材の持つ本来の魅力を最大限に引き出す湊純也氏の料理は、唯一無二の感動と共に、命をいただくことへの感謝と敬意を伝えるものである。